今回は、日蓮聖人のお手紙『松野殿御返事(まつのどのごへんじ)』というお手紙のお話をしていきたいと思います。
まことの道を求めるためには何が必要なのでしょうか?
お坊さんと他のひとがお唱えするお題目の功徳の違いについても少し書いてます。
前回、日蓮聖人のお手紙『妙法尼御前御返事(みょうほうあまごぜんごへんじ)』というお手紙を読み、≪死≫についてお話させていただきました。
さて、今回は≪まことの道とは?≫についてです。
法徳寺の朝のお勤めの際、お経を読んで、日蓮聖人のお手紙をお読みしております。
毎月≪3日≫にお読みしている日蓮聖人のお手紙。
それが今回、紹介させていただく『松野殿御返事』です。
この記事のもくじ
松野殿御返事の原文と意訳
松野殿御返事にいわく
魚(うお)の子は多けれども魚となるは少なく、菴羅樹(あんらじゅ)の花は多くさけども菓(み)になるは少なし。
人も又(また)此(かく)のごとし。
菩提心を発(おこ)す人は多けれども退せずして実(まこと)の道に入る者は少なし。
すべて凡夫の菩提心は多く悪縁にたぼらかされ、事にふれて移りやすき物なり。鎧を著(き)たる兵者(つわもの)は多けれども、戦に恐れをなさざるは少なきがごとし。
(建治2年 身延にて 御年55歳 昭和定本遺文1269ページ)
POINT松野殿御返事の【意訳】
魚の卵からかえる稚魚はたいへん数が多いけれども、成魚となるものは少なく、菴羅樹の花は多く咲くけれども、クルミに似た渋みの果実にみのるのは少ない。
人間もまたこれと同様である。
仏道を求める心をおこす人は多いけれども、どこまでも求めつづけて真実の仏道に会いたてまつる者は少ないのである。
凡人が仏道を求める心は、さまざまな邪悪な条件によって迷わされ、ことあるごとに変わりやすいものなのである。
それはちょうど、鎧をつけていかにも強そうに見える武士は多いけれども、いざ戦になって敵を恐れず勇敢に戦う武士が少ないのと同じようなものである。
[aside type="normal"]- 菴羅樹 マンゴーの樹のこと。非常に多くの花が咲くが、果実を結ぶのはそのなかでほんのわずかにすぎないといわれている。
「信心」のイメージ
熱しやすく、冷めやすいのが人間の常です。
「信心」というと、なにか異常なふるまいに没頭するかのようなイメージですが、決してそうではありません。
私たち自身に深く秘蔵されている尊さに目覚めようと、一所懸命に努力するのが仏道であり、菩提心であり、「信心」の道なのです。
[box class="blue_box" title="「信心」とは?"]≪私たちの本来備わっている尊さ≫に目覚めること。また、それに向かって努力すること。
[/box] [aside type="normal"]- 菩提心 阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)の略。さとりを求めて仏道を行おうとする心のこと。大乗仏教では自分のさとりだけを求めることを否定して、自己のさとりを求めると共の、ほかの世の人たちを救おうと願う心が要求される。
火のような信仰ではなく、水のような信心であれ
日蓮聖人が、「火のような信仰ではなく、水のような信心であれ」と語られたのは、まさにその意味がほんとうに人間としての目覚めに到達することはカンタンではありませんが、また立派な人と自分のような凡夫とはもともと違うのだと考え違いをしてはならないのです。
お坊さんと他のひとがお唱えするお題目の功徳の違いは?
このお手紙の文章の前に、日蓮聖人のお唱えになるお題目の功徳と、人びとの唱えるお題目の功徳とは、少しも変わることはないとお示しになったうえで、菩提心をおこせよと、日蓮聖人は私たちを激励してくれているのです。
[box class="blue_box" title="お題目の功徳"]日蓮聖人のお唱えするお題目の功徳と人びとの唱えるお題目の功徳は、少しも変わることがない。
[/box]
雪山童子は真理の言葉を聞くために身を捨てられましたが、私たちの目の前の戸惑いと戦いながら、まことの道を求めなければなりません。
- 雪山童子 お釈迦さまが過去世において菩薩として修行していたころの名前。いのちを惜しむことなく真実を求めていくことのたとえ。雪山童子は教えを聞く代償として鬼神に血肉を捧げたが、その鬼神は、実は、帝釈天(たいしゃくてん)が身を変えていたもので、雪山童子はいのちを失うことなく、帝釈天に守護されつつ教えを得ることができたという。
📢法徳寺では、毎月≪18日≫に唱題行(お題目修行)を行っております!!
[日時]毎月18日 19:00~20:00
[場所]法徳寺(上記のアクセスを参照にしてください)
※お問い合わせは、下記≪お問合せボタン≫を押してください。
以上、
「まことの道を求めて|お坊さんと他のひとがお唱えするお題目の功徳の違いは?」
でした。
お読みいただき有難うございました。
次回は、『 佐渡御勘気鈔(さどごかんきしょう) 』の決断するときに ≪どう覚悟していくか≫ について書いています。
[kanren postid="1005"]